2006年対馬への旅(三日目)

●7月12日(水)

 ウグイスとトンビのけたたましい声で目覚める。干した衣類の回収が朝の仕事だ。ほとんどの衣類が乾いている。ありがたいことだ。朝食の時間となり、昨日と同じ大広間へと向かう。料理はよくありがちな、旅館の朝定食だ。生卵、納豆、のり、アジの干物等々。ゆっくりと食し、サービスのコーヒーをいただく。満足満足。

 部屋にもどり、荷物をまとめ、さあ出発だ。フロントで宿泊料を支払い、表へとでる。雨はあがり、曇り空だが、歩くにはこれぐらいがちょうど良い。雨のためゆっくり見れなかった路傍の花を見ながら歩を進める。オニユリ、ハクウンキスゲ等々の花が咲いている。
〔photo001.jpg:あさつゆに濡れるヒトツバタゴイ〕
〔photo002.jpg:オニユリ〕

 鳥の鳴き声はウグイスの声がしきりにひびく。普段は草原の中にいるため、あまり肉眼で見ることが出来ない鳥だという話であったが。この島では、姿をよく観察する。対馬はウグイスの島とでも言えそうだ。あと、トンビも非常に多く、電信柱の1本1本にいるのではないかと思えるぐらいだ。カラスはあまり見かけなかった、いたとしても、郊外に多いハシボソガラスがほとんどであったような気がする。

 右手に見える西泊海水浴場、内海で流れが弱いせいか、白砂の美しい海岸だ。農作業へと向かう地元のじいちゃん、ばあちゃんと挨拶をかわす。ちょっと、警戒感を持っているような感じだ。まだ、キャンプシーズンには早いので、僕に対し、いぶかしい気持ちでももったのであろうか。今日の目的地である三宇田海水浴場へ行く道は、林道のように未舗装の所が多かった。当日は舗装化工事の真っ最中であった。将来的には全面舗装になるのであろう。1時間ほど歩くと、視界の開ける場所に到着する。殿岬という細い半島の付け根部分だ。空は晴れて、少しはすがすがしい気分になる。

 しかし、この沖合いは、ロシアのバルチック艦隊と東郷平八郎ひきいる帝国海軍の艦隊が激突した日本海海戦の主戦場でもあった。その当時、ロシアの海兵たちが、多数この地に漂流し、敵であるにもかかわらず、地元の人々が救助したいう美談も残っている。今、目の前にある美しい海岸を見ていると、そういったきな臭いことがあったことを想像するのは難しい。負傷したロシアの将校を見舞う、日本の将校の姿がレリーフで作られている。さすがに空々しいような感じがしないでもない。
〔photo004.jpg:日本海海戦美談の図〕

 海岸の高台を下り、目的地の三宇田海水浴場の入り口にたどりつく。目の前には白砂の砂浜が広がっている。〔photo1.jpg:三宇田海水浴場遠望〕しかし、前日までの大雨のせいか、海の色は少し濁っている感じだ。砂浜にもゴミや海草が多数打ち上げられているようだ。清掃作業にきていた地元の人たちと挨拶をかわす。この海岸は、地元の人でも見とれるぐらいきれいな場所だと自慢される。日本の渚100選でも選ばれているという。いつも、もっときれいなのだがと、残念そうであった。一般客は数人いたが、まだ海が冷たいためか、泳いでいる人はいなかった。

 すぐにキャンプ地の下見に行く。すぐ上の高台には草地のキャンプ場があるが、炊事場等がないようだ。そこで、貸しテントのエリアでもあるもう一つの高台へと向う。そこは8人用ぐらいのテントが10数張り、林立していた。僕の一人用のゴアライトテントをはれる余地は十分にある。ぐるりと周辺を回ったとき1メートルほどの蛇を藪のなかでみかけたが、まあ、草地の方までは入ってこないであろう。客は誰もおらず。炊事場の水も出るのも確認。そこで、もう一度、キャンプの受付へと戻り、連泊の手続きをすませる。ここで2泊することとなる。

 キャンプ場で、荷物を下ろし、テントをはる。大きな荷物をテントの中にほうりこむ、これで一安心だ。この周囲をあらためて見渡すと、湾奥にある突端部のような感じで、周囲を海と山に囲まれた、非常に落ちつく所だ。
〔photo3.jpg:キャンプ場周辺のオニユリとハクウンキスゲ群落〕

 コーヒーと菓子パンで昼食だ。ますます晴れ間が広がり、かなりアチチな状態となる。そろそろ周辺散策でもしようと思い。北へとむかう、韓国を遠望できる展望台があるそうなので、そこまで、たどりつければいいのだが・・・。しばらく海岸沿いに歩く。茂みの中でカニの音がカサカサとなり響く。〔photo2.jpg:アカガニ?〕車もほとんどこない、静かな道だ。道沿いの港では50センチほどの大きさの魚がジャンプを繰り返していた。なにかもっと大きな魚にでも追われているのだろうか?

 港の小屋が高床式で、一様に玉ねぎをぶら下げているのは、この地特有のものなのでは。〔photo9.jpg:乾燥たまねぎ〕 また、山際のがけの部分に2〜3個固まってある、墓石のような形の物体がなんであるのか?疑問であった。その姿はいたるところにあった。その正体は何か?
 〔photo4.jpg:墓なのか?〕
 〔photo5.jpg:万歳峠入り口の石碑〕
 〔photo6.jpg:日本海海戦勝利万歳ビール〕
 〔photo7.jpg:石がご神体の祠〕
 〔photo8.jpg:石がご神体の祠(拡大図)〕

 対馬といえば動植物の固有種、希少種がいることでも有名だ。最近よく名前を聞くのはツシマヤマネコであろう。イリオモテヤマネコと似たかんじで、氷河期のとき、対馬が大陸と陸続きであったときに、大陸から来たものらしい。そのヤマネコを道端で、まさか目撃するとは思っていなかった。そこは、人家から数100メートル離れた、人気のない、切通しであった。道路を横切るその姿を見たときに、ネコにしては丸いなと思いつつも、カメラのシャッターを押すいとまも無く、茂みの中に入っていった。全体的に丸っこいかんじで、尻尾が太く、まだら模様が印象的であった。山側から海というか岬の方に駆け抜けていった。その間、数秒ぐらいか。写真を取れなかったのは非常に残念だ。しばし呆然としていたが、また会うこともあるだろうと、気を取り直し、また、歩みをすすめることに。しかし、その後2度とあうことはなかった・・・。

 あとコウライキジを見ることが出来た、熱帯の動物のように色鮮やかなキジであった。対馬とくに北側の上対馬は自然環境が比較的よく残されているという印象が深まった。

 海岸沿いのアップダウンの道を進むうちにタイムアップとなり、来た道を戻ることにする。たまらない暑さになる。熱中症にならんよう、路傍の湧き水を頭にかけ、歩む。キャンプ場に近づくと、山のほうに小屋があり、車が止まっている。看板によると、温泉の源泉であるという話だ。今回のキャンプ場に隣接して渚の湯という温泉があるのだが、そこの源泉であるという。キャンプ場の管理人の話では、かなり深くボーリングしたのだろうとのことだ。

 キャンプ場にやっと戻ってくる。6時半ぐらいまで、夕闇せまる山あいの雰囲気を堪能する。〔photo10.jpg:夕暮れ〕誰もいない海岸に降り、砂浜を散策する。地元の人の清掃のおかげか、ゴミらしいゴミはほとんどない、ほんとにきれいな海岸だ。はだしで歩いて、感触を楽しむ。いやー快適快適。

 夕闇がせまり、夕食の準備だ。8時ぐらいになってもあまり暗くならない。満月で空全体が明るくなっているようだ。棒ラーメンと菓子パンのコンビで満足する。食後の紅茶もうまし。沖合いのイカつり船の明かりを見つつ、眠りにつく。


●本日のデータ
○天気
 曇りのち晴れ
○日程
 (国民宿舎)−>(殿碕)−>(三宇田海水浴場のキャンプ場)−>
 (豊)−>(三宇田海水浴場のキャンプ場)
○食事
 朝食:国民宿舎で生卵、納豆等
 昼食:キャンプ場で菓子パン
 夕食:棒ラーメンと菓子パン
○宿泊
 三宇田海水浴場のキャンプ場